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2020.03.11 掲載

アウトドアクリエイター 安⽥佳弘さん

投稿者:企画部 政策課

「狩猟」を軸とした、⾃然と共に⽣きる暮らし。

芸術⼤学の研究⽣時代に、⼤阪から移住した安⽥佳弘さん。

いなべ暮らしも今年で17年⽬を迎える。

現在は猟師として、「狩猟」を⽣業の中⼼に置き、⾃ら最⾼のロケーションと称する⼭の麓に家族で暮らす。

安田さん1

季節の狩猟採集を暮らしの軸としながら、味噌や醤油などの調味料を⼿づくりし、⾃宅横に夫婦ふたりで建てたという

雑貨屋兼カフェの『MY HOUSE』を営み、⾃宅周辺の森をフィールドに『My Forest College』という名の⾃然学校を主宰する。

その他にも、アウトドアクリエイターとして、⾃然や狩猟をテーマとしたワークショップの開催や講演、アウトドア雑誌の執筆ライターなど...

安⽥さんの活動は多岐にわたる。

安田さん2

そんな安⽥さんは、男の⼦ならではの好奇⼼、「⽣きものを捕まえる」ということや「猟」に対する憧れが、幼い頃から⼈⼀倍あったという。

⼤学で⾃然環境の再⽣と保全について学び、当時所属していた探検部で訪れたという国内外の⼭・川・島・洞窟などでの活動をはじめ、とりわけ北アジアで狩猟⽂化に触れたことが、今の暮らしのベースになっていると話す。

安田さん3

安⽥さん家族が暮らす家をぐるりと囲むように広がる⾥⼭には、シカやイノシシ、サルをはじめ、その他⼩動物も多く⽣息する。

その⾥⼭を⾃らのフィールドと称し、徒歩圏内での暮らしが持続可能な範囲で、無雪期は罠猟(括り罠)を、積雪期には単独銃猟(忍び猟)を⽇々⾏う。

⼤学時代から狩猟に携わり、現在はシカやイノシシ等の⼤型哺乳類を中⼼に、年間約50頭を狩猟する。

安田さん4

ゾウやキリンよりもシカやイノシシに特別な想いを抱くという安⽥さんは、「その命を家族の糧としているから」と話す。

中でもイノシシは、⼈を遥かに凌駕し、⽝よりも優れた嗅覚を持つ敏感な動物だそうで、⾹りの⽴つ⽯鹸類は⼀切使わないそう。

また、安⽥さんの「匂い」を動物たちにとってより⾃然なものにするため、どんなに悪天候でも可能な限り毎⽇、森の中を歩くという。

安田さん5

それだけの⽇数を森で過ごすことでまた、動物の⽇々の⾏動パターンや家族構成までも、把握できるようになるそうだ。

そうして、獣種や個体を⾒極めた上で罠を仕掛けたり、雪の中、銃を担ぎ⾜跡を執拗にトレースして撃ち獲る。

狙いを定め銃の引き⾦を引く瞬間も、罠にかかった動物を仕留める時も、互いに命がけだという。

共に暮らす地で同じ時を過ごし、同じく⽣を受けた動物への愛と畏敬の念。

対峙したもの同⼠で無いと、決して分からない⼼理戦がそこで繰り広げられるのだ。

安田さん6

⾃然あるからこその、狩猟採集と暮らし。

動物たちを育み、包み込む「⾃然」。

「⾃然」があるからこそ動物たちが⽣きられ、「狩猟」ができる。

そして、獲た⾁を⾷べることで安⽥さん家族は⽣きられ、⽪や⾓で必要な道具や雑貨をつくることができ、お店も営むことができる。

安田さん7

ライフスタイルの変化や⾼齢化に伴う⼈⼝の都市部流出などにより、これまで⼈の暮らす「⾥」と動物の暮らす「⼭」との緩衝帯となっていた「⾥⼭」が荒廃しつつある昨今。

⾥に居ついた野⽣動物による農作物への⾷害に代表される「獣害」が問題となっている。

しかし、「獣害」はあっても「害獣」は存在しないと安⽥さんは⾔う。

「狩猟」と「駆除」、命を奪う⾏為は同じでも、⼼持ちは別物なのだそうだ。

決してシカやイノシシを根絶やしにするのではなく、継続的に狩猟圧をかけることで個体数を適正に抑え、その命を⾥⼭の恵みとしていただく。

安⽥さんにとっての狩猟採集は「⽣業」であると同時に、⾥⼭を保全するための「営み」でもある。

それは、⾃らのフィールドで⾏う循環した⾃然との持続可能な暮らし⽅なのだ。

安田さん8

⽇々頭で考え、全⾝の機能をフル稼動し、命を掛けて⾃然と動物と向き合う安⽥さんの暮らしは、我々の想像すら及ばない遠い世界のようにも感じる。

しかしそれは、知ろうとしないとするだけで、直ぐ側にある往来の暮らし⽅でもあるのだ。

「動物を捕まえ解体し、⾷べるまでの⼯程は本当に時間がかかるし⼤変。でも、その⾁を家族や友⼈が美味しいと⾔って⾷べてくれる。その⼀⾔で全て報われる」と安⽥さんは話す。

安田さん9

(写真上:安⽥さんが仕留めた⿅の⾁で奥さまが作ったMY HOUSEのシチューランチ。※現在は販売終了

そして、ほぼ毎⽇⾥⼭に⼊るからこそ出会うことができる美しい⾃然美や草花。

⾃然の呼吸を感じ取れるからこそ発⾒できる森の恵み。

季節ごとに変わる地球の宝物探しほど、楽しいことは無いだろう。

安田さん10

間も無くこの地で捕らえたシカやイノシシなどを解体し販売する『鈴原⼭⾁店』が、同敷地内に完成予定だ。

主には、『MY HOUSE』での提供をはじめ⾃家消費、友⼈のお店に卸す他、⼩売も検討しているとのこと。

合わせて、夏には奥さまの妹によるパン屋さんも同地にオープンさせるべく、着々と準備を進めている。

安田さん11

「友産友消」顔が⾒える暮らし。

安⽥さんが⾃給⾃⾜をやめたのは4年前。

他⼈の価値観を⼰に取り⼊れ、幅を広げるという意味でも、周りに暮らす友⼈たちの⼒に頼ることを選んだという。

「いなべには農家や⽊こり、芸術家やカメラマンなど、芸達者な⼈が多い。友⼈に頼ることで⾃分の時間が⽣まれ、⼼に余裕ができ、暮らしがさらに楽しくなった」と安⽥さんは話す。

例えば野菜は、信頼できる地域の友⼈農家が育てたものを買う。あるいは、⾃⾝の仕留めた⼭⾁と交換する。

そんな昔は当たり前だった「地域で協⼒し合う循環した暮らし」を、安⽥さんはいなべで実現している。

それぞれが得意分野とし、与え合う「もの」は、唯⼀無⼆であり価値ある「知恵の結晶」でもあるのだ。

安田さん12

お⾦で欲しいものがなんでも⼿に⼊る時代ではあるが、⼈の⼿から⽣まれた「もの」の価値を考え、つくり⼿の顔が⾒える「もの」を取り⼊れた暮らしほど贅沢なものはないように思う。

その「もの」にストーリーが加わり、更にその「もの」の価値が増す。

⾷べものであれば更に「おいしい」のだ。

「⼣飯で出た⾁や野菜を⾒た息⼦が、これは誰が獲った⾁なの?誰が作った野菜なの?と聞くんです。そう疑問に思える今の環境は、過去の⾃分から⾒ても羨ましい」と、安⽥さんは話す。

安田さん13

⾃然と共に⽣きること。

古来より、我々⼈間と密にあった「⾃然」との向き合い⽅。

そして、地域で協⼒し合う循環した安⽥さんならではの「いなべ暮らし」。

今回の記事を通じて、改めて「今」の暮らしを考える、そんなきっかっけになればと思う。


MY HOUSE ⼭の麓の雑貨と喫茶

三重県の最北端いなべ市に広がる鈴⿅⼭脈の⼭の麓、『鈴原』の森の中にあるカフェ。

安⽥さんが狩猟で仕留めた⿅や猪などの「⼭⾁」をメインに、MY HOUSE 周辺で収穫した⼭菜や果実、⽊の実やキノコなどの⼭の恵み、友⼈たちの地物や野菜を使ったランチやおやつが楽しめる。

【住所】三重県いなべ市北勢町新町1333

【電話番号】0594-72-4311(⾃宅兼)※予約お勧め

【営業時間】11時から17時まで

【営業⽇】⽇・⽉・⽕・⽔(⼟曜は不定休)※臨時休業あり

安田さん14

My Forest College

MYHOUSE のフィールドに広がる森を舞台に、四季を通した⾥と⼭とのつながりを学びながら、五感で⾃然を感じ、智慧と技術の種を蒔く、ネイチャースクール。

4⽉〜翌3⽉までの1 年間、メンバー固定で⽉ごとにテーマを設けたJUNIOR クラス(⼩1〜⼩3)とYOUTH クラス(⼩4〜中学⽣)、各⽉個別募集のGLOW クラス(18 歳以上)の3 クラス編成となり、3クラスともに定員10名で展開。

毎年、12⽉頃から次年度の参加者を募集。

詳細や申し込み等は、公式WEBをチェック。


【Credit】

〈取材撮影ご協⼒〉

 アウトドアクリエーター 安⽥佳弘さん

〈撮影〉

 ウラタタカヒデ(鈴麓寫眞)

〈インタビュア・テキスト〉

 企画部 政策課

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