グリーンクリエイティブいなべ

Inabeな人々|いなべ自然楽校

「自分さえ良ければ良い」時代は終わった 2020年、春。 新しい生活の始まりなどで心が弾む季節の...

9
June
2020
投稿者:事務局

「自分さえ良ければ良い」時代は終わった

2020年、春。

新しい生活の始まりなどで心が弾む季節のはずだが、今年はそうではない。コロナ禍で、全国的に通勤、通学や事業活動、個人の自由な行動が制限された。いなべでも同様だ。必要のため外出すると、誰もがマスクをつけている。

数か月で劇的に変わった生活様式に、大変な思いをしている人が多い。

それでも、何とか変化に対応してきたのは、事態を終息させるため、自分を守ることと同時に、自分の周りの人も守る必要がある、と考えたからではないだろうか。

これからは、「自分さえ良ければそれで良い」という考え方では生きられない。

「いなべ自然楽校(Inabe nature school)(以下通称「イナスク」)」の取り組みを知り、改めてそれを実感した。

イナスクはいなべの山(森や林)を活動拠点とする市民活動団体だ。2018年から、山や木に関わるワークショップ、学習支援、環境保全などを定期的に行っている。メンバーの「木材で物を作ってみたい」「ストーブ用の薪を自分で切り出してみたい」などの希望を叶えるとともに、まちを支える担い手となっている。

いなべに住む人のため、どのような活動をしているのか紹介したい。

自然楽園①.jpg

(イナスクの皆さん)

 

 

木からひろがる活動

イナスクの代表出口省吾さんは「木には無駄がない」と言う。

イナスクの活動の一つが山の間伐だ。人工林を間引くことで、災害に強い健全な山をつくりだす。

間伐した木は、材木に加工しベンチやテーブルなどの家具を製作。端切れはペンダントやかわいらしいキノコの置物などに。加工・製作時に出た木くずは庭に撒くことで、雑草が生えてこなくなる。間伐材を丸ごと使い、残すところは一切ない。

自然楽校②.JPG

(間伐をするとしっかりと木の根がはり、災害に強い山になる)

自然楽校③.JPG

(間伐材から作った製品を販売することで活動経費を生み出す)

昨年、北勢町阿下喜地区の山の間伐をした。間伐材を活用することはもちろんのこと、子どもたちの野外活動基地を整備することも目的だった。

また、製材や木工製品づくりのための技術研修を行ったり、学校・保育園・学童保育などに森林に関する学習支援を行ったり、教育にも携わる。

さらに、まちの危険木の伐採、木工製品づくりを通した就労支援などの社会貢献も行う。他の市民活動団体や地域との連携にも熱心で、人と人、人と自然とのつながりを生み出している。

取り組みは多岐のテーマを横断し、年代や立場などを問わずあらゆる人に関わる問題の解決になっている。その活動自体に、無駄がなく、誰かを取り残すこともなく、イナスクは日々進んでいる。

自然楽校④.JPG

(家族ぐるみで活動に参加するメンバーも多い)

自然楽校⑤.JPG

(イナスクが薪を提供し、「いなべ防災ボランティア」「森の十字社」などと防災活動実施)

.

いなべの木をもっと使い、持続可能なまちづくりを

 

イナスクは大安中学校「テクニカルボランティア部」の理念を引き継ぎ始まった。同部は1998年から2018年まで20年間活動。いなべの木を用いて家具を製作・販売し、売り上げで発展途上国に井戸を合計10基贈った。ここで、出口さんは顧問として生徒の指導を行っていた。

自然楽校⑥.jpg

(出口省吾さん)

「子どものころから、なぜいなべの木を使わないのか疑問だった」と出口さんは言う。

いなべ市北勢町出身の出口さん。地域は山に囲まれ、たくさんの木があるのに、家を建てるとき輸入木材を使うことが不思議だった。その疑問が、いなべの山、木を通した活動へつながった。

「SDGs達成に貢献する地域おこしを」という考えのもと、イナスクを立ち上げた。しかし、SDGsの理念が国連で採択されるずっと前から、出口さんには「いなべの木」をテーマに住み続けられるまちを目指す気持ちがあった。

世界で掲げられるより先に、いなべで学校、地域ぐるみの持続可能なまちづくりを始めていた、いわば先駆者だ。

※SDGs…2015年国連サミットで採択された「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。経済・環境・社会の諸問題を包括的に解決するための17の目標。いなべ市は2018年にSDGsの取り組みを始め、2019年に「SDGs日本モデル」宣言に賛同しました。

 

 

自分も周りも「楽しい」からはじめる

 

自然楽校⑦.JPG

(イナスク活動拠点を示す看板 【北勢町治田】)

イナスクの正式名称は「いなべ自然楽校」。学校ではなく「楽」校だ。

安全に整備された野外活動基地で遊んだり、キノコの菌打ちをしたりする子どもたちからは、笑顔があふれている。ウットバーニングのワークショップに参加した大人たちも、わからないところを教えあいながら、作品を作り上げている。

山で思いっきり体を動かすことも、一緒にモノをつくることも、誰かと一緒だともっと楽しい。その楽しみと共に、社会や環境、経済活動への気づき・学びを提供するのが、イナスクの特徴だ。

誰もが自宅などでできることをする時期。イナスクもこの期間を利用し、今後の計画を練っていた。状況が落ち着いたあと、どんな楽しい学びの時間が生まれるか待ち遠しい。

自然楽校⑨.jpg

(家で過ごす子どもたちにイナスクからプレゼント!伐採した危険木で作った簡単木工セットを市内店舗などで配布)

いなべ自然楽校

代表 出口省吾 080-5158-4730

https://design6k.wixsite.com/inasuku

【Credit】

〈取材撮影ご協力〉

いなべ自然楽校

〈撮影・取材〉

いなべ市役所 企画部 政策課、いなべ自然楽校