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2021.02.17 掲載

まちをつくる「点」(はなもも会・いなこね・岩田商店ギャラリー)

投稿者:事務局

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人の営みが1000年以上前からあったという。

瓦屋根の家々に、昭和から代々続く商店や材木店。

濃州街道沿いに栄えた北勢町阿下喜は、河川や鉄道など交通の便がよく、古くから人の行き来が盛んだった。

その歴史は思ったよりも長い。奈良時代の遺跡が、生活の音を感じる土器とともに発掘されている。



驚くような長い時間存在している。しかし、時の重厚さよりも、なつかしさの奥になぜか新鮮な印象を受ける。




このまちで活動する人を、「Inabeな人々」では度々取り上げた。ここで2021年も新たな動きが始まっている。

今回は過去に取材をした人・団体を含め、過去からいま、そして未来へとつながる3つの取り組みを紹介したい。


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あげきのおひなさんの実施団体「はなもも会」。(上記写真は2019年)

   過去の記事(http://www.inabe-gci.jp/art/2019/02/post-6.html

 

あげきのおひなさんではひな祭り時期、地区の家庭、商店など約100軒が自前のひな飾りを、自由に見学できる場所に飾る。

メイン会場の22段のひなかざりとともに、春の風物詩として多くの人を楽しませてきた。

しかし、コロナの影響で、メイン会場の展示を今年は見送ることとなった。

 

17年続けた活動が例年通りにはできない。関係者の高齢化が進み、次の世代への引継ぎなどの課題もあった。

ここで、活動そのものに区切りをつける選択もあった。



 はなもも会の水元暁美さんはこう話す。

「中止するのは簡単。でも、まちの人に少しでも明るい気持ちになってもらいたい」

同会は、別の形での実施を決めた。



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例年、観光客を主な対象としていたが、今年は市内在住者に楽しんでもらえる企画内容へと大幅に変更した。

家々のひな飾りのほか、まちなかの140か所に花飾りを吊るす。

そこに阿下喜小学校の5・6年生や、有志が書いた川柳や俳句が飾られるそうだ。



花飾りに導かれてのまち歩き。

俳句や川柳に目を通したり、お店や家の外からひな飾りを覗いたりしながら、足を止める。

この時期のいなべはまだ少し肌寒いが、季節の変わり目を辿れそうだ。


「動向を見ながら、できることをしていく」と話す水元さんに、地区の人々も協力を惜しまない。



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      2021あげきのおひなさん 実施予定期間 2月20日(土)~3月7日(日)







そんな協力店舗に飾られたひな人形の視線の先に、空き家がある。

この空き家で「いなべ子育てネットワーク(以下いなこね)」が、拠点づくりをはじめた。

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いなこねメンバーは子育て経験のある女性たち。

育児中の母親のための情報発信、マルシェ開催、子ども食堂実施(現在は休止中)などを手掛け、

母親に活躍できる場を提供してきた。


空き家は1月から地域の手を借りながら改修中だ。

チャレンジショップを備え、女性や子育て世代に限らず多様な人が気軽に集えるまちづくり拠点となる。

 

空き家の所有者は町内に住む佐藤富美人さん。一昨年の秋以降、家財道具などはそのままで、使われないままになっていた。

「ゆっくり片付けて、いずれは解体する予定だった。

片付けでいろいろなものが出てきてどうしようかと考えていたが、有効に使ってもらえることが楽しみ」と佐藤さんは話す。

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いなこね代表者の服部純子さんは、この地区を「活気を求めていて、人の出入りに慣れている」と感じている。

ここに根を張れば、自分たちも居心地のよい場所が生みだせると思った。

「人間はつながりたいが、その時代、そのまちにあったコミュニティのつくりかたがあると思う」と話す。

ほどよい距離を保ちながら、20年先も年齢を超え気軽に話せる人がいて欲しいという。



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かつては文具店、その前は呉服店だった建物は、数十年間、日常の暮らしとともにあった。

いなこねがイメージする多世代交流の役割を、過去も担っていた。


これから、ここにどんな人が訪れるのだろう。

数世代に渡って地域で暮らす家族。北勢線で通学する高校生。となり町から散策に来た子どもたち。

さまざまな人の息遣いで、静かだった空き家が満ちる予感がする。

   活動の詳細 (https://linktr.ee/inakonemama






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動き始めたばかりのいなこねのプロジェクトに対し、岩田商店ギャラリーは既に空き家活用で事業展開をすすめている。

元は商店だった建物を改修し、1階をギャラリースペースとした。

全国のアーティストの企画展や、作品販売などを2017から行う。

店長は版画作家でもある小寺貴也さん。企画のほか、持ち込み作家への対応も行い、共に展示空間をつくり上げる。

    過去の記事(http://www.inabe-gci.jp/art/2019/10/post-10.html)

 

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大都市と比べ地方ではアートに触れる機会が少ない。

同ギャラリーでは、今を生きる作家が切り取った世界を覗くことができる。

新しい出会いを目的に訪れる人や展示を望む人が後を絶たない。


現在はより幅広い層の作家・作品の受け入れのため、2階の空きスペースの改装を行っている。

 

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クラウドファンディングで、改装への支援を募ったところ、3週間で70人ほどの寄付があった。

小寺さんは予想以上の協力を受けたと話す。

「頑張らないと、と思います。岩田商店ギャラリーは地域に向け活動している部分がある。

今回、支援という形で、『地域と一緒に作っていっている』『必要としてもらっている』と感じています」と感謝を口にする。



実際に足を運ばなくても、誰かの紹介がなくても、等身大の自分のままでギャラリーの挑戦に加われる。

未来の展示空間を想像すると、ひとつの作品と向き合っているときのような広がりを感じる。

 
    クラウドファンディングのお知らせ(https://readyfor.jp/projects/iwatasyouten-kaizou-DSS

 







はなもも会、いなこね、岩田商店ギャラリー、それぞれの次の一歩。



それぞれの足跡は、まちの歴史全体から眺めると、ほとんど見えない小さな点だ。

しかし、彼、彼女たちが打つ点がこれからも続き、そのまわりに内外から多くの人が集まり、さらに点を穿(うが)つ。

一度だけの人、あるいは同じ人が何度も。

ときに途切れることがあっても、ひとつの流れとして線や面となる。

天の川のような、断続的な点が生み出す流れが、阿下喜というまちをつくりみずみずしく保っている。

 

この流れはだれも拒まない。だから、長くありつづけた。

人が生を営み、訪れ、通り過ぎていくこのまちで、ひとつの点になってみるのも悪くない。

 



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【Credit】

〈取材撮影ご協力〉

はなもも会、いなべ子育てネットワーク、岩田商店ギャラリー

〈撮影・取材〉

いなべ市役所 企画部 政策課

〈取材日〉

 令和3年2月

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